母のこと・2

薬飲み忘れ事件からママの体調はみるみる悪くなっていきました。(薬の飲み忘れが原因というわけではないと思いますが)
むくみがひいていた両足がまたパンパンに腫れてきて、歩くのも困難な状態に戻りつつありました。トイレだけはなんとか自力でトイレまで歩いていました。
貧血気味でぼーっとする、食欲がない、気持ち悪いという症状もあり、そんな時は病院で輸血してもらうと少し回復するようでした。この頃は年末まで続けていた抗がん剤の影響で赤血球が少なくなってしまっているからかな?と思っていましたが。

食欲がなくても、薬を飲むためには少しでも胃に何か入れてもらわないといけないわけで…私はおかゆの美味しい作り方をネットで検索し、1合分だけ炊いてみたのですが「食欲ないからあとで…」と水分だけとっているママ。
「じゃあ私がちょっと食べちゃおー」とママの横でおかゆを食べ始めると、「やっぱりママも食べたくなってきた」「美味しい」とおかゆを小1杯くらい食べてくれてとても嬉しかったのを覚えています。

そんな感じでおかゆ生活を続け、食欲も徐々に戻り普通のご飯も食べられるようになってきたある日の夜。
その日は夕飯にマカロニグラタンを作ろう!柔らかいし消化良いだろう!と思い立ち準備をしていたのですが、なぜかこの日に限ってホワイトソースを大失敗…
「ダマだらけになっちゃったーどうしよー」と台所で騒ぐ私に「ちょっとフライパン見せてみ、ママがやる!」というママ。
いやいや良いから、無理しないでベッドにいて!とお願いして、会社帰りのパパにレトルトのホワイトソースを買ってきてもらえるよう連絡。
結局グラタンが完成したのは21時頃で、いつもよりだいぶ遅い夕飯になってしまったのです。

今思うと、もともと病気になる前から胃腸が丈夫でなく、この頃もやっとおかゆじゃなくてスパゲッティや白いご飯を食べても大丈夫になったママに、遅い時間にグラタンなんか食べさせてしまったのが悪かったのかも…と後悔しています
これが私がママに作ってあげられた最後の食事でした。

翌朝、私は寝坊しました。(特に理由はない)
既に会社に行ったはずのパパからの着信で目が覚めました。「ママ体調悪いみたいだから、今朝もちょっと吐いちゃったし、ちょっと見てあげて」という電話でした。
ごめん寝坊しちゃったー!とリビングに行くと、ダイニングテーブルに座って吐きそうな気持ち悪さにじっと耐えているママがいました。
実はその次の日には外来の予約を入れていたので、1日辛抱して明日診てもらおうか…と話していたのですが、やはり尋常ではない体調の悪さだったのか、病院に電話して聞いてみるとママ。
ちょうど翌日の外来から主治医が変わることになっており、その電話が初めての新しい主治医の先生とのコンタクトでした。
大丈夫?私が先生に電話して伝えようか?と言ったのですが、自分で電話してみる。と病院に電話を入れるママ。
しっかりとした口調で症状を伝えると、先生から「明日まで様子を見てもいいけど、心配だったら遠慮せず来院してください」と言ってもらえてホッとした様子で電話を切りました。
このあとパパに会社を早退してもらい、帰ってき次第病院へ行くことに。

何はなくとも、昼の薬を飲んでもらわねばいけないので朝パパが会社に行く前につくったおかゆを温め直して茶碗1/3くらいだけ、梅干しで食べてもらいました。
そうこうしている間にパパが帰宅し、準備している間にママ嘔吐。胃の中にほとんど何も入っていなかったので、コーヒー色の胃液?のような、液体だけ。
でも吐いたらすっきりしたみたいで、少し顔色も良くなりました。

パパの運転する車で病院に向かい、処置室(ふだん輸血してもらうベッドのある部屋)で診ますので、と処置室に向かうと看護師さんたちにバタバタと案内され、では血液検査と処置が終わるまで外でお待ちくださいね。とパパと私は待合室に出されました。
15分くらいで再び処置室の中に呼ばれ、ママの寝ているベッドのそばにいくと新しい主治医の先生がいました。背が小さくて若々しい感じの、かわいらしく感じの良い女性の先生でした。
「いろんな複合的な要因があって、むくみや気持ち悪さなど身体がつらい状態になってしまっているので、一度検査入院という形で入院しましょう」と先生は言いました。
ママも、その方が安心だと判断したようです。

すぐに入院の手配がされ、病棟に案内してもらいました。ナースステーションのすぐ横にある個室しか空いてないとのことで、個室病棟でした。
じゃあ入院着に着替えてくださいね〜と看護師さんが着替えを持ってきてくれ、私がママの着替えを手伝いました。下半身のむくみがひどく、靴下を自分で脱がせられないので私がママの靴下を脱がせると「介護、介護(笑)」とママは笑っていました。

ひとまずこの日はパパも家に帰り、私も実家にいてもやることがないので自宅に戻り、翌日の金曜日は会社に行くことにしました。また土曜日くるね〜と声をかけて。